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(7) 災害情報システムの改善(避難戦略と情報戦略の統合)最後に大都市震災における情報伝達システムについて触れると、情報伝達システムを大都市震災とのかかわりで考えるとき、地震火災と住民避難の問題がとりわけ重要になる。しかし、それを可能にするためには、的確な情報収集に加えて、住民への迅速な情報伝達が不可欠である。現在、ほとんどの大都市では、こうした事態での情報メディアとして同報無線を使う計画(今回の震災の被災地には同報無線がほとんどなかった)であり、これをどう活用するかが震災対策の一つの鍵になる。たとえば、最近の大都市では急速にビル群が増えてきているので、いままで同報無線が聞こえていた地域も、ビル影になって聞こえなくなってしまったというケースは非常に多い。そのため、こうした同報無線の難聴地域の解消ということが大きな間題だし、またもっと大きな間題としては、同報無線を利用するとき、「情報伝達戦略」と「避難誘導戦略」を関連させて考えるという視点が重要だと、筆者は考えている。
わが国の大都市の震災避難システムは、ふつう二段階避難ということになっている。つまり、多くの大都市では、小公園や学校の校庭などが一時集合場所に指定されており、地震火災が発生したとき住民はまず一時集合場所に集まり、次いで、一時集合場所から広域避難場所に向かうことになっている。一時集合場所は、地震火災後まず住民が集まる場所であり、その意味で「避難の拠点」なのである。しかし、この一時集合場所を避難の拠点ばかりでなく、「情報の拠点」にもしたらどうだろうか、というのが筆者のかねてからの主張なのである。すなわち、避難の途上にある住民のすべてに情報を伝えることはなかなか難しいとしても、少なくとも住民が集まることになっている一時集合場所にいけば、災害情報を聞くことができるシステムを整備すべきだ、ということであ乱一時集合場所は本来の意味での避難拠点であるとともに、集合してきた住民に行動を指示するための情報拠点でもあるべきであろう。そこで、大都市震災時の情報メディアとしての同報無線の強化や増設をはかるとしたら、避難システムと情報システムは相互関連するという立場にたって、すべての一時集合場所にこれを設置するという方策が必要になるのではないだろうか。
(7) 被害状況の推測(震度の改訂)
ところで、一般に防災機関の初動態勢が適切に発動するためには、前述のように実際の被害情報を迅速に収集することが不可欠であるが、もう一つ、被害がまだわからない時点で入手可能な断片的情報からおおよその被害状況を予測する、ということも重要である。そうした被害予測の主要な目安は、気象庁が発表する「震度」である。しかし阪神・淡路大震災では、この震度情報がむしろ被害を過小評価させることになってしまった側面があるのではないか。

 

 

 

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